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大阪高等裁判所 平成4年(ネ)1464号 判決

控訴人

西丸亨

右訴訟代理人弁護士

安保嘉博

浅野則明

鍔田宜宏

被控訴人

田村平治

右訴訟代理人弁護士

尾埜善司

前田嘉道

徳永信一

右訴訟復代理人弁護士

塩野隆史

須藤隆二

主文

一  原判決を取り消す。

二  被控訴人は、被控訴人に対し、金一六六〇万〇九三七円及びこれに対する昭和六三年二月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  控訴人のその余の請求を棄却する。

四  訴訟費用は、第一、二審を通じてこれを五分し、その二を被控訴人の負担とし、その余は控訴人の負担とする。

五  この判決の二項は仮に執行することができる。

事実

一  当事者の申立

1  控訴人

(一)  原判決を取り消す。

(二)  被控訴人は、控訴人に対し、金三八四八万円及びこれに対する昭和六三年二月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え(元金につき請求の減縮)。

(三)  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

(四)  仮執行宣言

2  被控訴人

(一)  本件控訴を棄却する。

(二)  控訴費用は控訴人の負担とする。

二  当事者の主張

当事者双方の主張は、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決三枚目表八行目の「被告の往診を依頼し」を「自宅で」と改め、同裏九行目から一〇行目にかけての「毛布を持ってきて」の次に「控訴人の体を」を加え、同四枚目表九行目の「三月一五日」を「二月九日」と、同裏一一行目の「カイロプラクティス」を「カイロプラクティック」とそれぞれ改め、同六枚目裏六行目から七行目にかけての「三八四八万八二六五円」の次に「の内三八四八万円」を加える。

2  同六枚目裏末行の「③」の次に「(但し、『右手技の直後』との点を除く)」を加え、同七枚目表一〇行目の「ことは認め、」を「こと、控訴人が控訴人主張の医院、病院等で治療を受けたこと(但し、通院日数を除く)は認め、後遺障害及び症状固定は不知、」と改める。

三  証拠

証拠関係は、原審記録及び当審記録中の各証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  当事者、治療契約の締結

請求原因1の事実及び同2の(一)の事実は、当事者間に争いがない。

二  治療行為

1  請求原因2のうち、(二)の(1)、(2)の③(但し、「右手技の直後」との点を除く)、(3)、(三)、(四)の(1)、(2)の②、(五)の各事実は、当事者間に争いがない。

2  そこで、被控訴人が控訴人に対し、二月六日の脊椎整体術様手技及び同月九日の脊椎整体術様手技を行ったか否かについて検討する。

(一)  前記争いのない事実及び証拠(甲二〇の一、二、検甲四ないし一二、乙一、九、控訴人((第一回))、被控訴人)並びに弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(1) 昭和六三年二月六日午前一〇時すぎころに肩凝りの治療のために被控訴人治療院を訪れた控訴人に対し、被控訴人がまず問診したところ、控訴人は、既応症として二〇年程前に車の追突事故に遭い、その際整形外科医に鞭打ち症及び椎間板ヘルニアと診断されたこと、それ以来少なくとも三、四年に一度くらいはぎっくり腰を起こしていること等を述べていた。

(2) 被控訴人は、控訴人の右既応症から控訴人の肩凝りは、鞭打ち症の再発ないし腰部の疾患に基因するのではないかと疑い、控訴人をベットにうつ伏せにさせてその脊椎を頸部から腰部に至るまで触診したところ、腰椎の変形、後転、腰部の筋肉の硬直及び緊張が認められ、続いてラセーグテストを行ったところ、三〇度の陽性であり、さらに触診を続けたところ、座骨神経の経路に沿って筋肉の緊張及び圧痛が認められ、座骨神経痛の特徴的諸症状が確認された。そこで、被控訴人は、右触診及びラセーグテストの結果を勘案して、控訴人の肩凝りの症状は腰部の疾病に由来する座骨神経痛に基因するものであり、その治療として腰部の血行を良くして鎮痛をはかり、全身のバランスを改善する必要があると判断し、控訴人の悪いところは全部治療してやる旨控訴人に告げ、控訴人は、この際悪いところは全部治療してもらおうと決心し、被控訴人の行う全体治療を受けることにした。

(3) そこで、被控訴人は控訴人に対し、伏臥位の姿勢での背部操作及び仰臥位の姿勢での内股操作等の指圧、置針、低周波治療を行ったあと、さらに被控訴人は、後方に出ている控訴人の腰椎を衝撃圧によって矯正しようとして、ベッドでうつ伏せになっている控訴人の腰部脊椎に被控訴人の左膝を当て、控訴人の足と上体を持って控訴人の体を逆海老状態に強く曲げる手技を何度も繰り返し行った。控訴人は、その際痛みを感じたが、我慢していたところ、右手技の直後に、控訴人は腰が抜けたようになって腰にまったく力が入らず、ベッドから降りられない状態となった。これに対し、被控訴人がしばらくの間控訴人の足を引っ張ったりマッサージをしたりする等の手当てをしたところ、控訴人の右症状は回復し、動けるようになったので、控訴人は自ら車を運転して帰宅した。

(4) 同日夕方に控訴人は、自宅で腰部に痛みを覚えるとともに腰が立たない状態となったので、被控訴人に往診を依頼し、被控訴人が控訴人方に来て、控訴人の腰部等に灸をすえたり、手の甲部に刺針するなどの治療をしたところ、控訴人の右症状は軽快した。しかし、控訴人は、同日夜に腰部の激痛に見舞われ、その痛みは翌七日にも続いて生じた。

(5) 同月八日、控訴人は、午前中に被控訴人治療院を訪れて散針治療を受けたが、帰宅後の同日夕方になって、再び腰が動かなくなったので、自宅で被控訴人の刺針等の治療を受けた。

(6) 同月九日、控訴人は被控訴人治療院を訪れて被控訴人から指圧を受けたが、そのあと被控訴人は、控訴人をうつ伏せにさせ、被控訴人の右膝を控訴人の腰に当てた状態で、被控訴人の手の親指で控訴人の耳の上を押さえて控訴人の体全体を逆海老状に左右にねじ曲げる等の手技を何回も繰り返して行い、その間控訴人は激痛を訴えたが、被控訴人はこれを無視して右手技を継続した。

右手技の直後に、控訴人は体全体に震えが生じ、動けなくなった。これに対し、被控訴人は毛布を持ってきて控訴人の体を押さえ、しばらく指圧等の処置を講じたところ、控訴人の右症状は回復した。

(7) 控訴人は、同月二一日の鋸組合の新年会を欠席したことから、その間の事情を聞いた同組合の者に被控訴人がいわゆるもぐりではないかと言われたこともあって、被控訴人が免許証を持っているかどうか確認するためと合わせて治療も受けるために同月二二日被控訴人治療院を訪れた。控訴人は、同日までは被控訴人を信用し、腰の痛み等を治してもらえるものと思っていた。

(二)  右の事実によれば、被控訴人が控訴人に対し二月六日及び同月九日の両日、控訴人主張の様な脊椎整体術様手技を行ったことを認めることができる。

(三)  これに対し、被控訴人は、控訴人には右のような手技は一切行っておらず、二月六日の控訴人の腰が抜けたような状態となった症状は東洋医学でいう瞑眩現象であり、また同月九日の控訴人の体全体に震えが生じ、動けなくなった症状は肩井のつぼを指圧したことによって生じた立ち眩みのような一過性の貧血症状であって、いずれも腰部への圧迫によるものではない旨主張し、被控訴人の供述中にはこれに符合する部分がある。

しかしながら、証拠(甲一三、三一、三二の一、二、控訴人((第一回))、被控訴人)及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人治療院の当時の看板には、「指圧」の他に「整体」の文字も掲げてあり、被控訴人は、原審における被控訴人本人尋問の際には、全体治療の過程で必要と認めれば整体、カイロプラクティック、特殊法も行う旨供述しているうえ、控訴人の「例えば、寝て腰のところに膝を当ててぐっと足を曲げたりするということは」との質問に対し「それは指圧です」と答えたり、控訴人の「肩を持って足をぐっとやるのは」との質問に対し「指圧です」と答えて、これらをカイロプラクティックではなく指圧として控訴人に行ったことを認めるかのような供述をし、また控訴人の「その前の治療を覚えていらっしゃいますか。耳の上のところに手を当てて海老になってぐああっとやられた記憶がありませんか」との質問に対し「あります」と答え、控訴人が質問で「耳の上の方に親指を当てて、腰に膝を当てて海老なりに曲げて、それを両方、右も左も両方何回もやった」と述べ、裁判長が「そういうことをやったんですか」と質問したのに対し「はい」と答えていることが認められ、これらの事実と前記認定の事実に照らせば、被控訴人の二月六日の脊椎整体術様手技も同月九日の脊椎整体術様手技も一切行っていないとの供述部分は信用することができない。

また、被控訴人は、二月六日の控訴人の腰が抜けたような状態となった症状は、東洋医学でいう瞑眩現象である旨主張し、乙第二号証、被控訴人の供述中にはこれに符合する部分があるが、右症状の原因についてみるに、証拠(甲四一、証人宮本達也)によれば、もともと腰部脊柱管狭窄という状態にある患者が無理な姿勢を取らされた場合には、潜んでいた神経症状が一気に悪化し、右のような症状が起ることがあり、控訴人は二月六日当時腰部脊柱管狭窄症であったことが認められるから、控訴人の右症状は、控訴人に対して六日の脊椎整体術様手技が行われたことによるものと推認するのが相当である。

また、被控訴人は、二月九日の控訴人の体全体に震えが生じ、動けなくなった症状は肩井のつぼを指圧したことによって生じた一過性の貧血症状である旨主張するが、証拠(甲四一、証人宮本達也)によれば、医学的には人体に対する機械的刺激で全身の貧血を起すことは考えられないこと、肩井のつぼ付近の下には鎖骨下動脈があるが、これは外から触れにくい血管であるうえ、そのような大血管内に溶血性変化を起させるためには、これを上下から継続的に押さえ続ける必要があり、指圧のような一方向からの圧迫で溶血性変化が生じることは考えられず、右症状は、頚椎の両側を走っている血管で脳の血流を支えている椎骨動脈の障害の存在により発生することが多く、椎骨動脈は特に中高年者においては、首への手技によって影響を受けやすい血管で、加齢現象がある人に頚椎の回旋運動か、過伸展位を継続すれば、椎骨動脈に障害が生じ、全身の震え等が起ることが認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。そうすると控訴人の右症状は、控訴人に対して二月九日の脊椎整体術様手技が行われたことによるものと推認するのが相当である。

三  控訴人の症状及びこれと治療行為との因果関係

1  控訴人が以前に一、二日間で治る程度のぎっくり腰になったり、ごく軽度の椎間板ヘルニアをわずらったりしていたこと、控訴人が現在腰部脊柱管狭窄症に起因する座骨神経痛等の神経症状、間歇性跛行等の歩行困難、長時間の起立及び座業が困難となる等の運動機能障害を生じていることは、当事者間に争いがない。

2  証拠(甲二ないし八、一二、一七、二三、三二の1、2、三八ないし四一、証人宮本達也、控訴人((第一、二回))、被控訴人)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(一)  控訴人は昭和六三年二月六日と同月九日に被控訴人から前記脊椎整体術様手技を受ける以前は、右ぎっくり腰、椎間板ヘルニア及び肩凝り以外に腰部、背部及び両下肢等に痛みを感じたことはなく、何ら神経症状の発現もなかった。

(二)  ところが、被控訴人に右手技を受けた直後から、控訴人に腰部・背部痛、両下肢痛などの激痛が発現し、そのため控訴人は同月九日直ちに松田整形外科医院を訪れてレントゲン検査等をうけたところ、腰椎椎間板症と診断された。

(三)  控訴人は、同年三月一五日、大原診療所で座骨神経痛、変形性腰椎症、頚肩腕症候群と診断され、以後同診療所で理学療法の施術を受けていたが、歩行後の右下肢の脱力感及び右下肢の牽引痛が軽減せず、長時間の起立、座業等同一姿勢の保持ができず、歩行も困難となっていた。

(四)  控訴人は、同年八月二九日、国立京都病院で右根性座骨神経痛と診断され、また前記大原診療所の医師から第二岡本病院整形外科の前野幹幸医師を紹介され、同医師が同月三〇日にMRI検査を行った結果、控訴人にはごく軽度の腰椎椎間板ヘルニアが認められるとともに、それよりも後方要素よりの圧迫に基づく腰部脊柱管狭窄が強く認められ、これが椎間板ヘルニアと結合して現在の痛みを呈しているが、リハビリテーションの効果もないと診断された。

なお、右MRI検査等では、右腰部脊柱管狭窄症をきたす外傷誘因を示すような所見は認められず、右腰部脊柱管狭窄症は前から存在していたと判断された。

(五)  控訴人は、同月末ころ、前記のような運動機能障害等の後遺障害を残して、その症状はほぼ固定した。

(六)  控訴人は、その後平成元年一〇月四日に京都府立心身障害者福祉センター附属リハビリテーション病院で診断を受けたときも、両下肢アキレス腱反射は消失し、腰椎の背屈は制限されており、歩行能力テストでは一三分で四二三メートルしか歩けず、間歇性跛行のためそれ以上の歩行継続はできなかった。

3  右事実によれば、被控訴人が昭和六三年二月六日及び同月九日に控訴人に対して行った脊椎整体術様手技によって、それまで脊柱管狭窄症が存在しながらも、これによる神経症状が発症しない状態で保たれていた控訴人に、外的圧力が加わり、これに神経症状等を発症させたことは明らかであり、被控訴人の前記手技と控訴人の右症状との間には相当因果関係があるというべきである。

四  被控訴人の責任

1  前記のように、控訴人は、肩凝り治療のために被控訴人治療院を訪れ、その適切な治療を求めたものであるが、被控訴人は、触診等の独自の診察により、控訴人には腰椎の変形、後転があり、これが肩凝りの原因であると診断し、その治療のためには腰椎の矯正が必要であるとして、本件脊椎整体術様手技を行ったものであるが、証拠(甲一四ないし一六、三〇、三一、三二の2、四二、乙九)及び弁論の全趣旨によれば、右のような手技は、衝撃圧によって腰椎等の矯正をはかることを主眼とするものであるから、その対象疾患には自ら制限があり、徒手調整の手技によって症状を悪化し得る頻度の高い疾患、例えば椎間板ヘルニア、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症等の症状を有る者に対して右のような手技を行えば、既応の潜在的症状を発現ないし増悪させる危険性が高く、従って、これらの症状を有する者に対しては、右のような手技を行うことは禁忌とされていること、また右のような手技は腰椎等に外的衝撃を直接的に加える点で、腰椎等に損傷を与える危険性が高いことが認められる。

2 右事実によれば、被控訴人が控訴人に対して行った前記手技は、椎間板ヘルニア、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症等の症状を有る者に対してこれを行えば、既応の潜在的症状を発現ないし増悪させる危険性が高いから、右手技を行う場合には、事前にレントゲン写真等により十分な医学的検査をして患者が右のような症状を有しないかどうかを明確に把握し、その上で医師の適切な指導を受けつつ行うべき注意義務があるというべく、また右手技は腰椎等に損傷を与える危険性が高いから、右手技を行う場合には、患者に対して急激に過大な衝撃を加えてその腰椎等を損傷することがないように圧迫の強さや体勢に十分配慮すべき注意義務があるというべきである。

3 ところが、被控訴人は、前記のように、肩凝りの治療にきた控訴人に対し、独自の判断により腰椎の矯正が必要だとして、何らの医学的検査をすることなく、また医師の指導監督を受けずに、潜在的に脊柱管狭窄症を有する控訴人に対して前記のような脊椎整体術様手技を行い、かつ二月九日の脊椎整体術様手技の際には、その圧迫の強さのために控訴人が激痛を訴えていたにもかかわらず、これを無視して強力な圧迫を加え続け、その結果、控訴人の腰椎に損傷を与え、もって控訴人に前記のような神経症状等を発現増悪させたものと推認せざるを得ない。

4 以上によれば、被控訴人には、控訴人との間の診療契約上の義務の不履行があったというべきであるから、被控訴人は、これによって生じた控訴人の損害を賠償すべき責任がある。

五  控訴人の損害

1  休業損害 三九万六三五四円

控訴人が住所地で大工左官道具等の販売及び鋸の目立てを業としているものであることは、当事者間に争いがない。

証拠(甲二二)によれば、控訴人の昭和六二年度の右営業による所得は二二六万四八八四円であることが認められる。控訴人は、右営業収入は道具等の販売によるものであって、他に鋸の目立てにより少なくとも年間二五〇万円の収入を得ていた旨主張し、控訴人の供述(第一回)中にはこれに符合する部分がある。しかし、昭和六二年分の所得税の確定申告書の右営業収入金額が道具等の販売による収入額だけであって、この中に何故に鋸の目立てによる営業収入が含まれていないのか明確でなく、右供述部分は信用できない。証人岡田亮一の証言も右認定を覆すに足りない。

右控訴人の供述(第一回)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人は、本件傷害による腰痛のために、昭和六二年二月六日から同年八月六日までの六か月間、道具等販売業の配達活動ができなかったり、鋸の目立ての仕事ができず、一部休業を余儀なくされたことが認められる。前記認定の控訴人の受傷の程度等からして、右休業による損害は右年収の三五パーセントと推認するのが相当である。

従って、控訴人の休業損害は三九万六三五四円(円未満切捨、以下同じ)となる。

2  後遺障害による逸失利益

八七〇万四五八三円

前記認定のとおり、控訴人の傷害は、長時間の起立や座業等同一姿勢の保持ができないとか歩行困難等の運動機能障害を残して、昭和六二年八月末に症状が固定した。

右後遺障害は、自賠法施行令二条別表後遺障害別等級表の九級一〇号に該当するものと認めるのが相当である。

右事実によれば、控訴人は、右後遺障害により、右症状固定日(当時五二才であったことは当事者間に争いがない)から六七才に達するまでの一五年間を通じて、その労働能力の三五パーセントを喪失したと認めるのが相当である。

そこで、控訴人の前記年収額(二二六万四八八四円)を基礎として、新ホフマン方式により中間利息を控除して一五年間(ホフマン係数10.9808)の逸失利益の本件受傷時の現価を求めると、八七〇万四五八三円となる。

3  傷害による慰謝料

一〇〇万円

控訴人の受傷内容、通院期間等を斟酌すると、控訴人の傷害による慰謝料は、一〇〇万円が相当である。

4  後遺障害による慰謝料

五〇〇万円

控訴人の後遺障害の内容、程度等を斟酌すると、控訴人の後遺障害による慰謝料は、五〇〇万円が相当である。

5  弁護士費用 一五〇万円

本件事故と相当因果関係のある弁護士費用相当の損害額は、一五〇万円と認めるのが相当である。

六  結論

以上によれば、控訴人の本訴請求は、金一六六〇万〇九三七円及びこれに対する昭和六三年二月九日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるからこれを認容し、その余は失当であるからこれを棄却すべきである。

そうすると、これと結論を異にする原判決は失当であるからこれを取り消し、控訴人の請求を右の限度で認容し、その余を棄却することとする。

よって、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九六条、八九条、九二条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官山中紀行 裁判官横山敏夫 裁判官寺﨑次郎は転補につき署名押印することができない。裁判長裁判官山中紀行)

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